短歌と笑い

短歌に馴染みはなかったのですが、2009年9月19日の第155回研究会で歌人の松村由利子さんの講演を聞き、それからNHK短歌を見たり、歌集を眺めたりするようになりました。色々な短歌がありますが、中にはけっこうトホホ感のある短歌もあって、大笑いとはいかなくても笑顔になってしまいます。こういう時間を持つことこそが、お金では買えない人生の豊かさなのでしょう。松村さんがご紹介された短歌の中から、私が選んだいくつかを掲載しておきます。

腹立ちて
炭まきちらす
三つの子を
なすにまかせて
うぐひすを聞く

与謝野晶子 32歳 7児の母

遊びたい
寝るのは嫌と
子は泣けり
こんなにわれは
寝たいのに

枝豆は
自分でむくから
美味いのに
子供が皿に
むきてくれたり

吉川宏志

「発音より声が変だよ」
‘Hello,Hello’
「声はふつうに出せばいいんだよ」

小島ゆかり 渡米して母に子供が指摘

分娩の
話をすれば
箸、宙に
浮かせて夫は
少し怯える

前田康子(吉川宏志の二つ上の奥さん)

産み終えて
仁王のごとき
妻の顔
うちのめされて
吾はありたり

大島忠洋

「ユリイカ」を
ヤリ烏賊とききちがへれど
をかしくもなき
夫と妻は

日高堯子(たかこ)

イヴ・モンタンの
「枯葉」愛して
三十年
妻を愛して
三十五年

岩田正

女子フィギュアの
丸きおしりを
みてありて
しばしほのぼのと
灯(とも)れり夫(つま)は

馬場あき子(岩田正の妻 71歳の作)

次々に
走り過ぎゆく
自転車の
運転する人
みな前を向く

もし豚を
かくの如くに
詰め込みて
電車走らば
非難起こるべし

奥村晃作

あぁ彼はいいねえ
職場に欲しいねえ
お笑い番組見て
独りごつ

松村由利子

手に打ちて
また打ち損ね
飛蚊症の
蚊と知るまでの
いく叩きかな

三輪芳子

婚姻の
披露の宴の
鶴の席
老いらは
医療を論じて
倦(う)まず

奥津甲種(2006年)

アメリカのようだね
水戸のご老公
内政干渉しては
立ち去る

「百万ドルの夜景」というが
米ドルか香港ドルか
いつのレートか

最近の
若い者はと
嘆きつつ
ネアンデルタールは
滅びたであろう

二十四世紀
なにかの過激派が
五秒で壊す
サグラダ・ファミリア

松木 秀

オオキミの
屁は臭かろと
思ってた
国民学校
一年の春

清見 糺